今回のコラムは、SMOの代表取締役 齊藤三希子による、中国・深センの視察記をお届けします。


 

ハードウェアのシリコンバレー、深センにある1歩先の未来

優れたブランド開発のためには、ニーズの把握が重要です。しかしそれは、顕在的なニーズではなく、時間や空間を超えた、本質的なニーズを捉えることが大切です。そのためSMOでは、短期的なトレンドフォーキャストはもちろん、10年単位の未来を見据えたフューチャーインサイトも行っています。
それに関連して、トレンドの種を見つけに世界各国を見てまわることもまた重要になります。今回は、私が20年ぶりに中国・深センに行って感じたことのレポートです。20年前も「これから伸びる都市」と注目はされていましたが、はっきり言って電気街と工場以外見るべきところ行くべきところがなく、「ああ、早く次の北京に行きたいなぁ」と思っていた深セン滞在。それが、仕事の兼ね合いもあり、今回の再訪問に繋がりました。

結論、「素晴らしい。なんだ、このワクワクする感じ。」

中国の経済成長の失速が懸念されていますが、深センは一歩先の未来を感じさせる街であることに間違いありません。キャッシュレスが徹底され、タクシーはほとんどEV、グローバルチェーンのラグジュアリーホテルが軒を連ね、ショッピングモールもある、そして街が他の中国の都市と比べて抜群にキレイ。さすが、人工都市だけのことはあります。

経済特区のひとつである深センは、香港に隣接している(新幹線を使えばたった14分!)ことや、ドローンメーカーとして世界シェアの8割近くを持つdjiを始めとする先端、有名企業およびその工場が集まっています。ゆえにサプライチェーンも高度に発達しているため、プロトタイプは(場合によっては製品も)短期間、低価格で仕上げることができ、それが「ハードウェアのシリコンバレー」と呼ばれている所以なのです。
そのサプライチェーンのすごさを垣間見ることができる巨大電気街「華強北」は、秋葉原をモデルにし、経済特区にありながら、ほぼ自然発生的に生まれた特別な場所。そのスピードたるや、「本当にこれでいいの?」と思うくらい。企画が定まったら、1階で電子部品を調達し、2階でパーツを仕入れ、3階で組み立ててもらい、はいできあがり! 従って、「これは、アップル製品にしか見えませんが微妙に違いますね」というような代物もたくさんあるのですが、数で質を補っています。常にクオリティーを大事にし、クライアントにもしつこく言っている私にはクラクラする出来事が目の前にあったのです。しかし実は、このクラクラがワクワクにも繋がっていたのではないかと思っています。

なぜ、そのスピード感が実現できるのか。それは、誰もが成功したい欲望からとにかくよく働くのです。そして意思決定も早い。ここ深センでは、「996」と言われる働き方が当たり前です。朝9時から夜9時まで週6日働く、成功したいならそれぐらい働かないとダメだ、という認識は、成長著しい深センならではなのかもしれません。働き方改革が謳われる日本では、もう「996」のような働き方はできないし、適しているとも思いません。経済成長という意味で、日本に必要なのは、深センと同じスピード感ではなく、意思決定の早さに加えての高度なマネジメントが必要なブランディングしかないのでは、と考えています。

(齊藤三希子)