新型コロナウィルス(COVID-19)との戦いは長期戦になりそうだという見方が主流になってきました。この間にも、すでに私たちに新しい価値観が根付こうとしています。それは、決してマイナスな要素ばかりではなく、ポジティブな転換も多いはずです。前回、世界各地で、それぞれ今できることから助け合っていく例をご紹介しましたが、今回は今後変わっていくであろう価値観と、変わることのない価値観についてお話しします。


 

変わりゆく価値観

COVID-19騒動発生後、“scaremongering (恐怖を煽る情報で他人を不安にさせること)” から派生した、“caremongering” (助け合うことで不安に立ち向かい、希望を取り戻すこと)という新語が生まれました。いわば「助け合い運動」であるcaremongeringは、前回のニュースレターでご紹介したNYのボランティアのケースに似ていますが、こちらはカナダ発祥で、外出制限や自粛で買い物ができない高齢者やケアを必要とする人々のために、SNS上でボランティア活動やお店や商品に関する情報交換から始まった運動です。長い歴史の中で、地域などのコミュニティ内で助け合って暮らしてきた我々ですが、近年そうした助け合いは薄れてきていたように思います。もともと人には、困っている人を助けたいという欲求があるはずです。それを発揮できる場所は、暮らすコミュニティだけでなく、情報化によってグローバルに広がりました。そうした多くの場で、今後より多くの助け合い精神が発揮されていき、COVID-19収束後も続いていくでしょう。そして、インターネット上に溢れるデマ情報や、TV・メディアの過剰な報道が、scaremongeringとなって買い占めなどを煽ったことから学んだ私たちは、正しい情報を選別し正しく行動していく姿勢を、より強めていくのではないでしょうか。

より「本質化」していく社会

この状況下で、組織、リーダー、そして、個人までも、その「本質」にあるものが、急速にむき出しになって見えてきています。本当に従業員や顧客のことを考えた判断を出せる企業。迅速に判断を下し、その判断に至った経緯を透明性を持って皆に説明できるリーダーの統率力。はたまた、個人レベルでは、周りのことを考えて自粛しながら日常生活を送れる人なのかどうか。一部の組織(や個人)がCOVID-19対応で一躍名を馳せたかと思えば、一方で、一度方向性を間違えたがために信用を取り戻すことが非常に難しくなっているケースもあります。ADIDASは、2019年12月の純利益が好調であったにもかかわらず、3月にドイツがCOVID-19経済対策として出した家賃滞納の救済措置を利用することで大批判を浴び、翌週には謝罪することになりました。その後ADIDASは深刻な経営難による大規模融資を受ける旨の発表を出しています。日本の商業施設では、政府による補償の有無で営業の判断が左右される中、LUMINEが政府判断を待たずに早い休業を発表したことで、世間から賞賛の支持を受けています。

 

こうした今の状況は、組織(または個人)のパーパスが、より一層強く現れる時でもあります。見えてきた本質が、首をかしげるようなものであれば、きっとその組織には、しっかりしたパーパスがないか、パーパスがあってもきちんと機能していないのでしょう。
アメリカでは、現在多くの企業が、企画してきたキャンペーンなどを一度保留にし、その企業の本質に立ち返るようなコーポレートCMを急遽作って放映し始めています。
先日当ニュースレターでご紹介した大型スーパーマーケットTargetは、そのパーパス”To help all families discover the joy of everyday life.”を改めて打ち出した新コーポレートCMを公開し、「離れていても家族の絆は変わらない、そして家族を助けていくというTargetのパーパスも変わることはない」と強調しています。

 

また、Appleは、彼らの強みであるcreativityとthink differentを軸にして作られた動画「Creativity Goes On」を緊急公開、家にいてもクリエイティビティは途絶えることがないことを、それを活かして家でできることの提案と共に、世界中に訴えています。

 

不安材料が多い世の中ではありますが、いまこそ、世界が変わろうとしている時です。変わることのないパーパスをしっかり持ちつつ、変わっていくべき価値観をこの機会に見つめ直して軌道修正をする。それは、大きな転換期であり、チャンスの時だと捉えるべきなのです。