SMOで提唱している「パーパス・ブランディング」。今回はそのメソッドについて、SMOの会社案内資料『Method of Purpose Branding 』の内容を抽出して、ご紹介いたします。


これまでとは異なるやり方があります。

2020年代、パーパスは経営における最大のテーマです。いま、働き手、消費者、株主、経営者といった、ビジネスにおける全てのステークホルダーが、パーパスを大切にしていく姿勢へと変化しています。この10年で、日本を含む世界中の多くのグローバル企業がパーパスを制定し、パーパスを中心に据えて経営を行う方向に舵を切っています。

SMOが掲げるパーパス・ブランディングとは、まさにこの事柄を指しています。現在の企業における経営活動とは、ほぼ同義でブランディング活動であると捉えているからです。私たちの考えるブランディングは、表層的なものではなく、経営における本質的な事柄であり、ブランド価値を高めることは、すなわち企業の価値を高めることに他なりません。パーパス・ブランディングは、企業全体を取り巻くとても広くて深い概念といえます。

ビジネス・マネジメント・キャンバス

これは、私たちが提供しているパーパス・ブランディングの全体像です。

経営活動の最終的なアウトカムは何らかの価値(Value)です。それはプロダクトやサービスという形で、あらゆるステークホルダーと接点を持つものです。従って、この図においては外界と接する最も外側に位置しています。その価値を創出するための、あらゆる取り組みすべてをブランディング(Branding)と位置づけています。それは、企業全体を覆うものであり、「Value」の一つ内側に位置しています。

それら一連の取り組みを「Execution(実行)」するために、企業は組織的活動(Organizational Activities)を行うのですが、それを遂行するためには「Strategy(戦略)」が必要となります。この「Strategy」は、実行可能で極めて現実的である必要があり、

また一方で、いくつもの選択肢が生じるものでもあります。そのため、戦略策定の前提として、人々を惹きつける魅力と大きな方向性の導きを兼ね備えた「Concept(根本概念)」が必要になります。これを決定づけるのは、組織機能(Organizational Functions)と、この図の核心に近い部分に位置する経営陣(Leadership)になります。


しかし現在のビジネス環境は、企業がその優位性を保つための模倣困難性を確立することを容易にはせず、差別化を意図するコンセプトや戦略の効果を、極めて弱体化させています。そこで、一見実現不可能とも思えるような大胆で挑戦的なコンセプトを掲げてイノベーションを誘発するか、あるいは類似性が高い戦略であっても、迅速かつローコストで展開できる強靱なオペレーションを構築し、確実に実行することで、企業はそれを乗り越えようとしています。


その2つを成し得るために必要なのが「Purpose(パーパス=存在理由)」です。イノベーションもオペレーショナル・エクセレンスも、それに関わる人々が、直面している難題の背景に、意義を見出すことができなければ実現できないのです。言い換えれば、組織は、自分たちがなぜ存在しているのか、なぜそれを行うのか、という単純かつ本質的な問いにしっかり向き合い、その答えとなる崇高な大義を明確にし、それを共有することが必要になります。

この一連の流れを実現できた組織こそが、社内外の優れたリソースを結集させ、共感を呼び起こし、結果として最大限のパフォーマンスを実現させるのです。



このように、パーパスを中心に据えて経営活動を行うことは、あらゆるステークホルダーに影響を及ぼします。その意味においては、パーパス・ブランディングは、それ自体にインターナル・ブランディングとエクスターナル・ブランディングを内包するものと言えます。

これまでのブランディングは、その二つを分けて考えていました。インターナル・ブランディングは、事業活動とはある種の距離が置かれ、コーポレート・ブランディングという枠組みの中で、経営企画や人事の領域を中心にして行われていました。

一方、エクスターナル・ブランディングは、消費者に対してブランド価値を発信していくという枠組みの中で、事業部やマーケティングの領域が中心となり、広告宣伝と近いところで行われていました。

しかし私たちの考えるパーパス・ブランディングにおいては、インターナルとエクスターナルというのは、施策群を分けるときのカテゴリーに過ぎません。

そもそもインターナル・ブランディングと呼ばれているものは、人の認知をシフトさせ、行動を変えるという手法論に近いところがあります。しかし、パーパス・ブランディングは、人々がパーパスを自分のものとし、自らの仕事そのものにおいて、パーパスに基づいて判断し、行動する、そのような組織になろうとする根本的な取り組みなのです。


では、実際にどのようにパーパス・ブランディングを実行していくのでしょうか?

その出発点となるパーパスに沿った事業活動を行うためにはどうすればいいのでしょうか?

SMOではIPCSEというモデルを使っています。


STRATEGY

人でも組織でも「なにかを実行する」という時には、大抵の場合、なにか考えてから行動に移すことになります。この“なにか考えて”というのは、それが企業の場合「戦略」と呼ばれるものであったりします。戦略には様々なものがあり、大きくは経営戦略であったり、個別戦略といったものなります。

CONCEPT

それらの戦略を実行可能なものとするため、それぞれすべての戦略を束ねる、より大きい方針や基本的な考え方が必要になります。これを私たちは「コンセプト」としています。戦略は実現性が問われるのに対し、コンセプトは人を惹きつける魅力的なものである必要があります。しかし、このコンセプトというものは、非常に儚いところがあり、様々な要因で移ろってしまうところがあります。

コンセプトから戦略、そして実行まで、一貫してブレのないもにするために必要なものがあります。それは、そもそも“なぜ〇〇はあるのか?”“なんのために〇〇は存在するのか?”といった本質的な問いに対する回答です。

PURPOSE

私たちは、行おうとしていることの「パーパス」を明確にすることから、すべてを始めることが大切だと考えています。そして、パーパス明確化から施策の実行まで、一連の取り組みを確実なものにするため、入念な「インプット」が欠かせません。


Purpose にはDiscovery & Movementの2つのフェーズがあります。


パーパスの発見と定義

パーパスの構成要素は実にシンプルな図で表すことができます。

左側は自分たちの企業が持っている「強み」と「情熱」です。

  • 「強み」とは、自分たちならではの精神風土から生まれる「気質」や「行動」の特長、ビジネス上の「得意分野」、「競合優位性」などがあります。
  • 「情熱」とは、自分たちの企業が「大切にしていること」、「こだわり」、そして社員が「仕事を通じて実現したいと願うこと」、など企業と社員の熱量が向かう先のことです。

これに対し、右側は市場、世の中からのニーズです。これには顕在化しているものもあれば、潜在しているものもあります。

そして、この左右の要素の交わるところに、「パーパス」は存在しているのです。この部分を深堀りし、探りあてたものを言語化したものが「パーパス」なのです。


パーパスの発見の仕方

パーパスの発見と定義はワークショップを通して行います。大きく分けて5つのステップを通じて、パーパスを導き出します。前ページにあるパーパスの構成要素(強み、情熱、顧客ニーズ)の観点からパーパスを発見します。

  1. WS1では、プロジェクトの趣旨や意義、流れ、またパーパスという概念の重要性などを参考事例なども使いながら説明します。また、それまでのリサーチで集めた情報を整理し、振り返り、重要なポイントを再確認します。
  2. WS2では強みを分析。WS1の内容を踏まえ、自分たちの強みは何か、様々なワークを通して再度分析します。
  3. WS3では情熱分析。自社の歴史やDNAを振り返り、また社内の声を活かして、自分たちは一体何に情熱を燃やしてこの仕事をしているのかを考えます。
  4. WS4ではニーズを分析。世の中から求められているニーズは何か、そして必要とされているニーズに自分たちができることは何かを考えます。ニーズは短期的ニーズ、長期的ニーズ、健在的、潜在的ニーズなど、多角的にワークを通じて深堀りします。そして、
  5. WS5ではこれまでのワークから重要なエッセンスを絞り、自社の存在理由を考え、文章にして表現します。

ワークする際は理論的に考えることも大事ですが、非論理的に考えることも必要です。自社らしさ、自社のカルチャーやトーン&マナーも同時に探ることで、最終的にパーパスを表現する際の文章や、クリエイティブ開発に関連するリソースも探っていきます。


パーパスで行動する組織

これは私たちが提供しているパーパス・ブランディングのフレームワークです。すべての人々がパーパスに基づいて行動する組織を実現するには、二つの取り組みがあります。

一つはパーパスへの深い理解です。その組織が掲げるパーパスを正しく学び、共感してもらうため、それに特化した研修やワークショップの新たな導入や既存の研修のリデザインを行います。それと同時に、パーパスの浸透度合いを把握するためのフォーマルな仕組みを社内コミュニケーションの中に組み入れます。

もう一つはパーパスへの信頼性の構築です。実際の仕事やプロジェクトをパーパスの視点で省察する特殊なワークショップや、パーパスに導かれた象徴的なプロジェクトを行います。そこで見出された、現実に起こったパーパスに基づく判断や行動を、広く社内外に共有することで、パーパスが本当に自分たちにとって意味のあるものとなり、さらに新たなパーパスに基づく判断や行動が創出されていきます。このほかにも、実際の日常的な業務の中にパーパスを取り込む、様々な取り組みを実装していきます。

これらの取り組みには終わりはありません。この習熟(Undestanding)と確認(Measurement)、内化(Internalization)と共有(Spread)のサイクルを回し続けることが、社内外に真なるムーブメントを起こし、パーパスに裏打ちされたブランド価値の創出につながっていくのです。


現在の企業における経営活動とは、ほぼ同義でブランディング活動であると捉えています。ブランディングは、表層的なものではなく、経営における本質的な事柄であり、ブランド価値を高めることは、すなわち企業やそのブランドの価値を高めることに他なりません。そして企業やブランドが存続する限り、この活動に終わりはありません。取り組み続けていくことが何よりも大事なのです。

パーパスを起点に動いてみてください。そして、さらなる成長を実現させてください。