毎年この時期にエスエムオーでは2月に行われるアメリカ・スーパーボウルで放映されたCMについて、パーパス・ブランディングの視点からとりあげ、コラムを展開しています。今年は、カリフォルニア在住の弊社コンサルタント、Jusinより、アメリカでひと騒動起きたM&M’sのキャラクターデザインの問題について、スーパーボウルCMで騒動が落ち着くまでの一連の流れを、パーパスと紐づけて解説します。

 


M&M’sのキャラクター引退 

今年1月、M&M’sはTwitter上で、商品の象徴であるマスコットキャラクターを引退させると発表した。

アメリカのみなさん、この1年、私たちは愛すべきマスコット、スポークス・キャンディーのデザインに数点の変更を加えてきました。誰も気づかないかもとは思っていましたが、まさかインターネット上で話題になるとは思ってもみませんでした。お菓子のキャラクターに履かせた靴ひとつをとっても論争になり二極化してしまうことを、今実感しています。M&M’Sは、人々を結びつけることを重要視しているので、このようなことは望んでいませんでした。

そこで、スポークスキャンディーは無期限で休止することになりました。代わって、Maya Rudolphがスポークスマンとして就任します。Rudolphさんは、遊び心を大切にし、誰もが居場所を感じられるような世界を作ってくれる方です。

背景

一体何が起きたのか。時は戻って2022年の1月当時、M&M’sは自社の象徴的マスコットのビジュアルを創新した。そこでは、緑色のM&M’sのニーハイブーツをスニーカーに変えることでセクシー感を減らし、ジェンダー平等とインクルージョン性を取り入れることにしたのだった。

緑のM&Mを、セクシーなブーツ姿のままでの継続を望む人々が反対派となり、ソーシャルメディア上で熱狂的な盛り上がりを見せた。その後M&Mは、インクルーシブ性の受け入れを表す紫色のM&Mの新キャラクターを発表した。それがまたしてもインターネット上で物議を醸すことになった。

ジョークだった

その後今年1月になってツイートされたのが上記の休止発表。2月のスーパーボウルCMから、M&M’sのマスコットは、有名女優マヤ・ルドルフに変更されるとした。が、スーパーボウルでのCM放映の後、M&M’sはキャンディのマスコットが復活することを発表した。これらはすべて、楽しさ重視のマーケティング演出だった。この戦略は、M&M’sのブランドバーパス「bringing us all together to share in laughter and fun(笑いと楽しさを共有し、みんなを一つにすること )」に根付いたものだったのだ。M&M’sの昔からのファンは安堵した。ともすると炎上しそうな演出ではあるが、M&M’sのパーパス「笑いと楽しさ」を理解しているファンの大半は、この騒動を「笑いと楽しさ」として受け入れた。そして秩序を取り戻した。

結論

ブランドは常に我々の文化を反映しストーリーを語ってきた。これはマーケティングとブランディングの歴史において不変である。そしてもうひとつ不変なのは、常にそれに反対する否定派が存在するということだ。ソーシャルメディアの時代になって、否定的な人の声が増幅されるようになってきたのだ。

このように増幅されてきた否定的な声に対して、ブランドがどう対処するかが課題となっている。無視することもできるが、M&M’sのように否定的な感情をクリエイティブな方法で活用することもできる。結果、M&M’sは論争を乗り越え、勝利を収めたのだ。多様性、平等性、包括性を受け入れ、ユーモアを交えて論争に対処することで、忠実なファンとのつながりを強める。M&M’sは、熟練した柔道家のように、相手の力を受け止め、また魅力的で楽しいブランドストーリーに変えたのだ。

 

 

Justin Lee (SMO パーパスコンサルタント)

 


SMOはパーパス主導によるブランディングを行う、
コンサルティングファームです。