弊社SMOで、東証プライム上場の全企業1839社の企業理念を全て調査し、その中から公式に「パーパス(もしくは英語でPurpose)」を掲げている企業のパーパス・ステートメントをリスト化、発表した「PURPOSE STATEMENT LIST2022」。
こちらの資料をもとに、アメリカ在住コンサルタント:Justin Leeによる、日本・海外のパーパス・ステートメント比較解説「パーパスリストから学ぶ、良いパーパスを表現するためのポイント」を先日セミナーでご紹介しました。計4回となる連載の、最終回をお届けします。
第4回「Brand Name Link 社名に連動したもの」
最後のパターンは「社名に連動したもの」です。
ブランドネーム、カンパニーネームにリンクするこのパターンを使っている日本企業の例として、日本ピラー工業があります。
この会社は産業機器と電子機器のメーカーで、
パーパスは
「“社会を支える”未来を創る」です。
社名のピラーは日本語で柱ですから、
「支える」と「柱」をかけています。
このように社名とパーパスがリンクしています。
海外では、サントラスト銀行がこのパターンの良い例です。
サントラスト銀行のパーパスは、
Lighting the way to financial well-being.
つまり、光が照らすように、金銭的、経済的な安心に導くことです。
社名の “sun “を利用して、パーパスの「light the way」と連動しました。
このように、ブランド/カンパニー名とパーパスをつなげる手法は、パーパス・ステートメントにブランドらしさを入れる方法です。このようなパーパス・ステートメントには、そのブランドの、らしさが出て、非常に独自性の高いものになります。英語では brand specfic と呼んでいますが、ここで、面白い注意点があります。
一歩引いてみて、ズームアウトすると、このbrand specific のタイプの他にも2種類のパーパスが考えられます。
まずは、 industry specific というタイプです。その業界ならではのパーパス・ステートメントのタイプです。
例えば、「Refresh the world 世界をリフレッシュする(世界をうるおす)」というようなパーパスがあります。このパーパス・ステートメントは、ペプシが使っても、コカコーラが使ってもどんな飲料会社が使っても違和感は特にありません。実際に、この「Refresh the world」は、コカコーラのパーパスです。
これまでに一つの考察があります。
それは、象徴的な、世界的に有名なブランドのコカコーラのパーパスは、コカコーラならではの独自性のあるパーパスを設定していないことです。
そして3つ目は universal というタイプです。抽象的で、どんな企業が使っても良いタイプです。非常に汎用性が高いとも言えます。
例えば「Enrich lives. 生活を豊かにする」というパーパス。
これは、どんな企業がこのパーパス・ステートメントを使っても違和感はないと思います。
実は、これは、Appleのパーパスです。
ここから一つの疑問が生まれます。
Appleはなぜ、このような短く、抽象的なパーパスが設定できるのか?
考えられる理由としては、Appleはマス向けのブランドです。
彼らの実績、彼らのブランディングを通して、人々がアップルのストーリーを既によく知っています。その暗黙の理解があるからこそ、このようなパーパスの設定が可能だと考えられます。
【Key Learning】
これまでに紹介した事例と、弊社が調査したパーパスリストが一つのことを教えてくれます。
それは、パーパスは様々な形、様々なタイプがあり、正しいパーパスステートメントはありません。
アップルとコカコーラからわかったことは、ブランドらしさはパーパスの必須/必要条件ではありません。
パーパスはコアなもの、核となるものではあるけれど、そのパーパスがブランドとその会社の状況と調和したり互換することが大切です。つまり、パーパスを策定する際に、包括的な視点が不可欠です。
会社、ブランドはそれぞれ違いますが、もし、パーパスを洋服と例えるなら、その会社によくフィットするパーパスを見つけることを心かけましょう。