パーパス・ブランディングの中心となる「パーパス」。

では、パーパスは一体どのようにして発見するのか?この連載では、パーパスを発見するためのヒントと知見をご紹介したい。


第一回 ニーズを探る

 

SMOが考えるパーパスは、主に3の構成要素で成る。

(1)自社の強み

(2)自社の情熱

(3)市場、世の中からのニーズ

社内の(1)(2)、そして社外の(3)の3つが交わるところに、自社の存在理由があるのだ。この部分を深掘りし、探り当て言語化したものが「パーパス」となる。

今回はまず「(3)市場、世の中からのニーズ」について、詳しく見てみよう。

 

ニーズは氷山の一角

ニーズはまるで氷山の一角のようなもので、表に見えている部分と水の中に隠れた部分がある。つまり、ニーズは、顕在化しているものと潜在化しているものがあるとして捉えることができる。

顕在ニーズと潜在ニーズを網羅的に探り整理する際には、ニューヨーク大学(NYU)の教授のAdam Alterが提唱した、ニーズと顧客で構成する2x2マトリックスが役に立つ。このマトリックスの縦軸は顕在(Articulated)←→非顕在(Unarticulated)のニーズで分けてある。横軸は、対応済み顧客(Served)←→未対応顧客(Unserved)で分けてある。この4象限で下記の問いを考えるきっかけになる。

 

  • その顧客において、今はどんなニーズに対応しているのか?
  • 彼らの潜在ニーズは何か?
  • 現在の市場にはどんな顧客がいるのか?

例えば、すでにマクドナルドに訪れる親たちからはマクドナルドに子供を預けたいという潜在ニーズがあるかもしれない。

  • 一方、自社が参加している市場以外の顧客(図の右側)は誰なのか?
  • 彼ら自身がはっきり求められていないけれども、もしかして何かのニーズがないか?

任天堂のWiiはここに相応しい例だった。ゲーマー以外の層は、ゲームを求めているわけではなくとも手軽にゲームをしたいという潜在ニーズはあった。任天堂はそれに気づき、誰もが馴染みのあるリモコンの形をゲームコントローラーにし、直感で体を動かすゲームを作った。

このフレームワークを通じ、自社の市場を照らし合わせ、上記のような問いを考えると、丁寧に、網羅的にニーズを整理ができるであろう。

 

顕在ニーズの本質を見つけるための、トヨタの5WHY分析

トヨタ生産方式の発案者の大野耐一氏が生み出した「5WHY分析」は本質的な顕在ニーズの発見に役立つ。この手法は元々、製造に関する問題「なぜ」を5回繰り返し聞くことで、根本的な原因を突き止めるというものである。この考え方はニーズにも応用することができる。なぜ顧客にこんなニーズがあるのか?を5回聞くことで、商品の機能に関するニーズのほかに、情緒的なニーズや本質的なニーズが見えてくるであろう。

ビジネススクールでよく出る例で応用してみよう。ハーバード大学のレビット教授がかつて言ったように、 人々は1/4インチのドリルを買いたいのではなく、1/4インチ口径の穴がほしいのだ。もっと踏み込んでみよう。なぜ壁に穴を開けたいのか?顧客は額縁を掛けたいと思っているかもしれない。なぜ?家族旅行の写真を飾りたいのかもしれない。なぜ?思い出を楽しみたいからだ。

潜在ニーズを見つける2つの手法

「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう。」

フォード・モーター・カンパニーの創業者、ヘンリー・フォードの名言だ。この言葉から、顧客は自分が本当に欲しいもの、必要とするものに関して、実は無知であるのが分かる。顧客自身が知らない、表現できないニーズを見つけるは決して容易ではない。延長線の先ではなく、既存の枠の外で考える必要がある。ここに役立つアプローチは二つある。

一つ目はデザイン・シンキング。デザイン・シンキングのプロセスは5つのステップがある(スタンフォード式)

  1. 共感(empathize)
  2. 定義(define)
  3. アイデア(ideate)
  4. プロトタイプ(prototype)
  5. テスト(test)

潜在ニーズの発見に役立つのは1の「共感」と、2の問題・課題の「定義」。これは、ヒューマン・セントリック視点、そして顧客視点を徹底的に意識して、顧客が持っているあらゆる課題を探ることで、今まで見落としていた潜んだインサイトを発見することができる。

二つ目のアプローチは、思い切って飛躍した未来を想像すること。SMOでは、未来洞察という手法を使用している。(その手法と例について詳細は、弊社タブロイドの、TOKYO2019にて)

ここまでで、顕在ニーズと潜在ニーズを特定するためのフレームワークや手法を見てきた。次回は自社の強みと情熱に主眼を置き、詳しく見てみよう。