パーパスというと、会社の理念として使われていることが多いのですが、ブランドそのものがパーパスを持ち、それを起点としているパーパスドリブンな商品も多く存在します。

イギリスの、ユニリーバによる洗剤ブランド Persil は、「Dirt is good(泥汚れは良いものだ)」を信念として、子供達に外遊びをさせること(そしてその汚れた衣類をより白くすること)をパーパスにしている、パーパスドリブンなブランドです。

今回は、このPersilが2016年に行った、パーパスドリブンなキャンペーンについてご紹介します。


①時代とずれてきたパーパス ー 環境の変化により、ブランドパーパスを見つめ直す必要が出てきた

イギリスでは、97%の家庭が洗濯洗剤を使用しており、1世帯あたりの洗濯頻度は1日1回と言われます。とはいえ、洗濯という、一般的に人々の関心の低いカテゴリーで勝つためには、ブランドが何らかの形で注目され、人々との関連性を持たなければなりません。

Persilは洗剤ブランドの代表例として古くから知られ、1980年代には10代だったヴィクトリア・ベッカムが「Persilくらい誰でも知っている存在になりたい」と宣言したほどでした。90年代後半には、「Dirt is good」という信念と、子供たちに外で遊んでもらってどんどん汚してもらう(そんな服でも、白よりも白くする)、というパーパスにフォーカスして、洗剤というカテゴリーを超え、文化との関連性につなげることに成功していました。

しかし、2010年代中盤になってPersilの売上高は、競合他社が躍進する中で苦戦していました。そこには、子供の外遊びの時間が、ゲームやパソコンといった屋内での遊びに変わってしまっており、子供たちを外で遊ばせるというPersilのパーパスは、その意味を失っていたという背景があったのです。

実際に、当時を15年前と比較すると、子供達の外遊びの時間は約半分に減っていました。しかし、子どもたちが外遊びをしないと、前頭前皮質(感情の調整、計画の立案、問題の解決などをする脳の実行制御機能をする箇所)の発達が損なわれ、注意力の低下、不安、社会性の低下、攻撃性の亢進、精神的な問題などに関連してくることが研究で明らかになりました。「dirt(汚すこと)」はもはや単なる「good」ではなく、「重要なもの」だったのです。

そこで、Persilは自らのパーパスに再び勢いをつけることができればー つまり、汚すことが重要であることを人々に分からせ、子供を外で遊ばせる親を増やすことができれば、関連性を取り戻し、市場を獲得できる可能性があると考えました。

そのために必要なプロセスを

  1. オーディエンスを挑発し、この問題とブランドの信念に注目させる。
  2. 外遊びがなぜ重要なのかを人々に伝える。
  3. 真の変革を促し、より多くの子供たちが外で遊べるようにする。

として、これによってブランドの関連性と信頼性を高め、バリューシェア、売上、洗濯回数の増加を目指しました。

②へ続く

 

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