新型コロナウィルスの影響で国を跨ぐ行き来の制限で、ここ2年間ほどのブランクは、国内の良さを見つけ直すきっかけになったという一方で、海外の最先端事情には疎くなっていると感じられている方も多いことかと思います。前回に引き続き、SMOの広報担当・平原によるサンフランシスコ出張レポート 「サンフランシスコで体験した”循環型”ライフスタイル(後編)」をお届けします。

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こんにちは!平原依文です。
先日出張で訪問したサンフランシスコの最先端サステナビリティ事例の後編をお届けしたいと思います。

サステナビリティ観点で見ると、実はサンフランシスコはSDGsが策定されるはるか昔から街全体のグリーン化に力を入れており、2012年にはアメリカ・カナダの中で最も環境に優しい都市として表彰されています。そのため、街の住民も環境問題に対する意識が他と比べて非常に高いです。(参考サイト「SF Environment」

そこで、今回ご紹介させていただくのはビジネス街の中心にあるローカルスーパー「The Market」。

地元民から愛される「The Market」とは?
「The Market」はTwitter社の1階に所在していることでも有名であり、主なお客さんはビジネス街周辺のビジネスパーソンや地元に暮らす人々です。
サステナビリティ意識の高いサンフランシスコのあり方を象徴したビジネスを展開しており、会社のミッションとアスピレーションにもその想いが込められています。

ミッション 訳:
私たちは、地元の優れた食材と地元オーナーが提供する本物の食品を称えることで、お客様とそのまわりの大切な方々を地域社会とつなげ、食体験の触感覚を共有できるように努め、地域社会の健康に寄与します。

アスピレーション(目指すもの)訳:
・地元住民の雇用を通じての、コミュニティ活性化
・地元企業の成長促進。他では得られない高度なプラットフォームを提供
・持続可能な方法で地元から調達し、新鮮な食品を提供
・お客様との長期的かつ有意義な関係を育む

では、このようなミッションを掲げている「The Market」は実際にどのような取り組みをし、どのような商品を取り扱っているのでしょうか?

・「人と人を繋ぐ」スタッフが直接徒歩で届ける配達サービス
コロナ禍で配達需要が増えている中、The Marketの配達方法も一味違いました。前提として地元配達しか実施しておらず、店員自らが徒歩で400メートル圏内の場所に無料で届けています。環境に配慮して自動車やトラックは使用せずに、徒歩で届けることによって、お客様との長期的かつ有意義な関係を育む姿勢をとっていることがわかります。

・女性起業家専用のアルコール商品棚

店内を歩いていた際に真っ先に目に止まったのが
「WOMEN OWNED BUSINESS」、
女性起業家による商品を集めたディスプレイ棚です。

サンフランシスコの男女の人口比率を調べると104:100でほぼ半々に等しいです。その背景もあり、女性のエンパワメントにも都市全体で非常に積極的です。商品の多様性は、起業家の多様性にかかっているからこそ、このような店舗設計をすることも非常に大切ですね。日本のジェンダーギャップ指数の順位は156カ国中120位で、先進国の中で最低レベルです(参考サイト日経ビジネス」より)。ジェンダーと人権問題は「概念」と「数字」の両方を浸透させる必要があるからこそ、日本でもジェンダー平等を促進するための「日常設計」が必要だと改めて実感しました。

そのラインナップの中で、一番気になったのが缶ワイン「just enough」です。

“理想の相手と結婚して、子供を生み、サンフランシスコでいい暮らしをするために高学歴を取得し、ハイスペック企業に就職”・・・、そんな社会からの期待に応えることに疲れ、またそんな自分自身に「不十分」さを感じ、社会ではなく自分自身が「十分」だと感じる生活を生きようと思い「just enough」を起業した創設者のJessica Hershfield氏。どんな人でも楽しめる、美味しくて環境に優しい缶ワインを通じて、人々を社会の期待から解放し、自分らしいライフスタイルを選べる世界を作りたいという彼女自身のパーパスが商品に反映されているブランドそのものでした。

 


以上、2回に渡ってサンフランシスコのサステナビリティレポートをお届けして参りましたが、いかがでしたでしょうか?TARGET社からjust enough社まで、どの企業にも共通していたのが、原点に立ち返り、本質に向き合い、ブランドの核の部分を通じて、対話をしながら社会課題を解決していることです。

私たちが暮らす日本において、周りの組織ではどうでしょうか?ブランドの本質よりも、形式的なSDGsが先走っていないでしょうか?本来であれば、組織、またはブランドの本質である存在意義、つまり「パーパス」が明確化されてから、その上でSDGsが目標として掲げられます。SDGsをブランドとして使うのではなく、まずは自社のブランドの存在意義から考えてみてはいかがでしょうか。

(SMO 広報兼SDGsコンサルタント 平原)