<こちらの記事は、SMOタブロイド誌「TOKYO 2020」からの抜粋です。タブロイド誌全編及び最新版の全編は、こちらよりダウンロードいただけます>

 

11月22日に、パンダの赤ちゃんが生まれたと話題の、和歌山アドベンチャーワールド。じつは、こちらを運営する株式会社アワーズではパーパス・ドリブンな経営をされていることをご存知でしょうか?SMOでは、オリジナルタブロイド誌「TOKYO 2020」のインタビューで、山本社長に、パーパスのこと、取り組み始めたSDGsのこと、そして、その両者の関係をお聞きしました。ファンを魅了し続ける経営のヒントをご覧ください。

 

インタビュー:齊藤三希子(SMO)


 

齊藤:先日、アドベンチャーワールドに伺いましたら、働いている皆さんが、楽しそうにお仕事をされてました。どうしたらこんな組織ができるのでしょうか?

山本:正直わからないです。パーパス主導型の経営にシフトしたことは影響しているかもしれません。社内の雰囲気はだいぶ変わりました。

理念経営、パーパス経営と言われるようなものは、どの会社さんもされていると思うのですが、明言しているかしていないかの違いですね。創業者世代であれば、創業者がおっしゃることが理念につながりますが、創業者がいらっしゃらなくなると、創業者の言葉や大切にしてきたことを明文化して、今後も大事にしていこうというだけの違いだと思っているので。弊社は、創業から42年、ずっと理念経営をしてきたと思っています。

齊藤:山本さんは今3代目でいらっしゃいますよね?これまで築かれてきた理念を今一度明文化されたのは社長になられてからですか?

山本:明文化したのは、社長になる時ですね。社員の意思統一を図るために、実行しました。先代の父は、会計士志望で数字に強く、多分地頭がすごくいいので、能力的に全然違う自分は同じやり方はできないな、自分なりの経営手法を探してみよう、と。300人以上社員がいるから、その力を活かす経営手法を考えていて、行き着いたのが、ミッション系、パーパス系と呼ばれる理念型でした。

齊藤:実際導入されるにあたって、何から着手しましたか?

山本:理念を明確にして、社員の方々に、これからもこれを大事にしていきましょうと、そんなに違和感なく、なるほどみたいな感じでパーパスは受け入れられました。そしてなるべくたくさんそれを考える時間を作って下さい、とお願いしました。

齊藤:日々の業務が忙しいとなかなか時間が取れないですよね。

山本:そう、とても忙しい。でも、ビジョンミーティングをして下さい、そこで理念を考えて下さい、と。そして、会社の稟議書を変えました。何か実行するときや、書類にするときに、理念を考えないとできないような仕組みに変えたんです。

齊藤:理念を自分たちの仕事にブレイクダウンして考えた。

山本:そうです。それで、私たちの3つのスマイル ー ”社員・ゲスト・社会の3つのスマイル”を、どんなものを作りますか?そしてそれに対して目標設定をし、その手法を考え、効果を測定する、という稟議書に変えました。最初は、理念について考えたことがなかったので、大変だったと思います。手法から目的にフォーカスするようになったので、意味がわからないっていうのはあったかと思いますね。今は、社員の皆さんの中から、理念に近い言葉が自然に出るようになってきています。

齊藤:それは素晴らしい成果ですね。他に理念主導型の経営をやるにあたって、取り入れられていることってありますか?

山本:採用を変えました。必ず理念に共感した人を採用し、それに行動が伴う方を採用しています。能力とか学歴はほぼ見ない。経験値がないのは仕方ないですけれども、入社の時点で共感はしているのは大きいです。

離職率も徐々に減りました。パーパスを導入して、最初は離職も増えるかなと思いました。逆に合わないのではないかと思ったし、実際そういう方もいらっしゃいました。個人の理念考え、パーパスを考えていくうちに、「あ、世界一周旅行行きたくなりました」って言って、行っちゃった方も。それはそれで、良かったと思います。

齊藤:答えにくかったら結構ですが、業績はどうでしょうか?

山本:理念経営と連動しているかは分からないですけれど、ここ4、5年で、多少の波はありますが良いです。昨年は売上も利益率も過去最高になりました。パンダが生まれたこともちろんあるのですが、計画的にやっています。

齊藤:パーパス主導型の経営は、アメリカ発祥ですが、日本の企業ではアメリカの企業と日本では違うんじゃないの?とおっしゃる方もいらっしゃいます。実際にパーパス経営をされている山本さんから、日本国内でどういう会社さんで導入すると良いか、アドバイスはありますか?

山本:元々、私は、日系企業にパーパス経営っていうものがあったと思っています。例えば、パナソニック、京セラっていうのはまさに理念、パーパスの会社ですね。理念型を地でいっているからこそ成長してきた。私はそれを目指したんです、しっかり軸を作ってきた。逆に言うと、欧米の企業で、理念、パーパス経営をされている会社が多いのに、私はびっくりしたんです。もっとパーパスより売上・成果命かと思っていました。セールスフォース、グーグルやアップルも理念、パーパス経営ですし。

やっぱり、大きな組織であればあるほど、軸となるものがなければ、人は成長しづらいし、力を発揮しないっていうのは感じていますね。

齊藤:外資だろうが日本企業だろうが、組織である以上は変わらないということですかね。

山本:まさにそうです。

齊藤:パーパスは、組織には必要なものであることがわかりました。次は、SDGsについて、お聞きしたいです。SDGsとパーパス、理念経営の親和性はあると思いますか?

山本:どの企業もパーパスとSDGs、絶対親和性があると思うから、取り入れられてると思うんですけれども、それが、自己中心的だったり経営者独断的なのは、これからの時代は共感性が得られなくなるでしょう。社会に貢献する意識や、社会と繋がっている、そういうところがすごく重要視されている。結局、私たちは社会のために存在している。個人もそうだし、企業も。ビジネスの根幹っていうのは、まずは身近な人を幸せにすることで、例えば起業する時というのは、隣の人や村・町の人が困っていることの課題解決を自分たちでして、それに対して対価をいただく、これがビジネスじゃないですか。この規模が大きくなっただけで、企業は地球や世界の課題を解決するために存在して、それに対する対価をいただく。そうなったときに、私たちは、社会のスマイルという理念、そして最終的に、笑顔あふれる明るい豊かな社会の実現、社会に存在する以上、これらに関わっていかないといけない。

それと、SDGs、持続可能な開発目標は、ほぼイコールなんですね。SDGsは目的じゃなくて目標です。私たちの最終的なゴールのイメージに対して、その間にSDGsが絶対入っています。これをクリアしなかったら、絶対実現できない。

ということは、企業の経営施策だったり、経営計画にこの目標を入れてしまおう、というだけの話だと思ってます。その社会課題、17個の社会課題に対して、私たちに何ができるかを考え続ける。それが、今のビジネスモデルのままでいいのか、そうでないのかを考えていくだけの話。

齊藤:SDGsは必然である。

山本:社会のスマイルという企業理念を考えていく中で、SDGsに出会ってしまうわけです。弊社の社員の皆さんは、動物が大好きな人が多いので、元々そういう意識を持っている人が多い。

齊藤:そうなんですね。SDGsは、目標であり、あるべき未来の姿だと考えています。アドベンチャーワールド、アワーズはどういう姿になっているのが望ましいと思われますか?

山本:そうですね、本当に難しくて。

先日、SDGsについて、10年後20年後のアドベンチャーワールドは?というテーマで話し合いをしました。世界一の〇〇な動物園っていうテーマで、世界一雇用が生まれる動物園とか、社員の方々から色々出て来たんですが、その中で、世界一動物がいない動物園というのが出てきて・・・

齊藤:動物がいない動物園(笑)

山本:それも、普段動物を飼育しているスタッフがそれを言ったんですね。

私たちが今提供できている価値が10年後も同じく必要とされるのであれば、同じものを提供できるならリアルな動物を介してなくてもいいじゃないということだと、私は解釈しています。

例えば今、リアルな動物を通して、お客様に命の大切さを感じて考えてもらうとか、親子の愛や、癒しを感じてもらうとか、もし動物がいなくてもできるのであれば、それも一つの道です。

私たちの存在意義は動物がいることではないんですね。動物はもちろん私たちにとってはかけがえのないパートナーですが、最終的に伝えたい幸せとスマイル、いかにこの3つのスマイル(社員・ゲスト・社会のスマイル)と幸せを作っていくかだけにフォーカスするのであれば、いない状態でも作り出せるんだったらいいじゃない、と。

今後、野生動物の飼育が難しくなっていくし、社会に動物園というものが必要とされない時代が来るかもしれない。欧米では実際に始まっていますし、そういう時に、私たちが存在する意義って何だろうなと。それは、もしかしたらVRやARかもしれないし、正直わからないですけどね。循環型パークですかね。

齊藤:世の中と繋がっていって、貢献しながら、エコシステムを作っていく、ということですよね。

山本:そうですね。もちろん環境配慮型の循環型パークはいいと思うのですが、例えばありがとうや笑顔も、循環させていきたいし、私たちが提供できる価値がパーク内外において、提供できる手法っていうのは無数にあると思うんですね。

その中で、パーク内がいわばプラスの影響力で循環している状態、もちろん物質的にも、SDGs関連で言うと、パーク内で発生したものはパーク内で処理して再利用できるような、例えば、水も二次用水とかを使用してますし、目指すところは環境に配慮した循環型パークですけれども、パーク内だけじゃなくて、社会の循環の一部になっていけたらいいなと。

齊藤:日本企業のSDGsは、まだこれからだとは思うんですけれども。

山本:うちもそうですし、まだどうでしょうかね。名前は聞きますし、SDGsバッジつけてる人もいっぱいいますけど、本質っていうのが…。例えばペットボトルの削減も大事ですが本質ではなくて、最終的に社会課題、世界課題を解決するビジネスに転換しないといけないと思ってるんです。今までのビジネスモデルじゃダメなんだよって。

エネルギーを使って消費するだけのビジネスモデルだけではダメで、極端に言うと、無くして、違うビジネスモデルをイノベーションで作り上げていく。

本気で取り組まないと、SDGsの達成に繋がらないのは明らかです。

それこそ動物のいない動物園目指すくらいじゃないとだめだと思うんですよね。パーパスもSDGsも、組織の未来には本当に必要なものだと思っています。

 

山本雅弘(やまもと・まさふみ)

1977年大阪府生まれ。
ジャイアントパンダをはじめとする140種1,400頭羽の動物が暮らすテーマパーク
「和歌山 アドベンチャーワールド」を運営する株式会社アワーズの3代目経営者。
2015年に経営を引き継ぎ、「こころでときを創るSmileカンパニー」という
パーパスをもとに、人を大切にする理念経営を実践。
「和歌山 アドベンチャーワールド」は、
トリップアドバイザーで動物園ランキング2018年1位(日本)を獲得。