SMOのアメリカ在住コンサルタント:Justin Leeによる、パーパス経営のヒント「パーパス・ドリブン・ブランドの戦略から学ぶ」。
本日はEvernote
のケーススタディをご紹介します。



Evernote
– パーパス発見のケーススタディ –

日本でも多くのユーザーを持つノートアプリのEvernoteは、10周年を迎えた時に、パーパスを起点に、ブランドリフレッシュを行った。今回は、Evernoteがどのようにパーパスを発見し、パーパスをブランドにつなげたかを紹介しよう。

当時Evernoteは、10年目を迎え、ユーザーのニーズが変わってきており、Evernoteアプリの使い方も多様化してきた。この中、さらなる成長のため、商品開発からカスタマーサービスの提供まで、ブランドに沿った体験をできる仕組みの構築が必要で、ブランドリフレッシュに挑んだのだ。


・最初のステップ

ブランド・コンセプトとビジュアル・アイデンティティを作る前に、同社のブランドチームはブランドの核心であるパーパスの定義から着手した。ブランドチームは原点に立ち戻り、既に退社した創業者にはどんな経緯で創業したのかを深掘りした。一方、外部のステークホルダーである顧客に対しては定性と定量調査を行い、パーパスを形成するエッセンスを抽出した。顧客調査を通じて分かったのは、ユーザーごとに様々な提供価値があるということであった。例えば、情報整理、生産性向上、アイディア発想、コラボレーションなどが挙げられた。さらに掘り下げていったところ、彼らは一つの鍵となる知見を見出した。それは、ユーザーに関わらず情報のオーバーロード(過負荷)を抱えていることだった。ブランドチームによれば、いま人々が処理する情報量は、人間の脳が対応できるキャパシティを超えている状況だと言う。

 

・中心となるアイディアの特定

この状況を打破するのがEvernoteの役割だとブランドチームは考えた。その中心となるアイディアが「フォーカス」だ。ブランドチームは、人々は本当に大切な物事に時間を費やすべきだという信念と「フォーカス」を掛け合わせ、パーパスの表現に落とし込んだ。

同社のCEOはこう説明する。「私たちのパーパスはシンプルだ。私たちは人々が本当に大切なことにフォーカスさせるためにいる。」

この再定義されたパーパスに基づき、ブランドチームはブランドDNAを策定した。EvernoteのブランドDNAは絞りに絞って最終的に4つの言葉となった。

  1. Optimistic(前向きで)
  2. Clever(賢く)
  3. Confident(自信に溢れ)
  4. Clear(明確であること)

そして、ブランドチームはパーパスとDNAで構成された明確な体系の元、ビジュアル・アイデンティティの作成に入った。さらに、それにとどまらず、商品開発をはじめカスタマーサポートまで、社内のあらゆる部署は全てこの体系に基づき意思決定するように全社を推進している。

 

・パーパス策定の成功要因

この事例を終える前に、パーパス策定におけるひとつの成功要因に触れておきたい。それはプロジェクトの体制である。同社のブランドチームは、あらゆる視点のインプットを重要視しているうえに、ブランドは全社を代表するものだと考え、全社の巻き込みが不可欠だとした。実際に商品開発、オペレーション、マーケティング、営業、カスタマーサポートなどからプロジェクトに参加する人員が選抜された。これによって、社員は出来上がった成果物に対し、より納得でき、そしてリニューアルされたブランドの理念を応援したくなり、その理念を自身の仕事とアウトプットを繋げていくようになる。

Evernoteが示してくれたように、ブランドリフレッシュにおいては、ブランドの存在理由を全社に渡り丁寧に時間をかけて定義することが大切となる。パーパス・ブランディングの第一歩段階は、より多くの社員を巻き込み、丁寧にパーパスを策定していくことから始まると言えよう。

 


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