パーパスの定義

パーパスは私たちがなぜ存在するのかを最もシンプルかつ純粋に表したもの

辞書による “purpose”は、大きく分けて2つの意味が載っています。

第1は「目的」と「狙い」、第2は「〔存在などの〕理由、意義、意味」。企業がブランドのパーパスについて話す場合、この2番目の意味合いが多分に含まれていることは、パーパスブランディングの元祖であるサウスウェスト航空が「パーパスは、“私たちはなぜ存在するのか”を最もシンプルかつ純粋に表現したものだ」と説明したことからもわかります。

そして、辞書には載っていない、第3の意味合いもあります。ハーバード大学にてパーパスについての講演をした際、マーク・ザッカーバーグは「パーパスは自分以上に大きい何かに関わり、必要とされ、より良い将来のために働きたい、という感覚であり、パーパこそが真の幸せを作るものだ」と語りました。つまり、目的と存在理由に加え、「志」や「大義」のような意味合いも含んでいます。


ミッション、ビジョン、バリューズとの違い

SMOは、パーパスには様々な形があって良いと考えています。

多くの企業ではすでに理念、ミッション・ビジョンなどを掲げていることが多いでしょう。それが自らの存在理由を明確にしていれば、パーパスととらえることができます。また「ミッション・ビジョン・バリュー」がセットで語られることが多く見受けられます。しかし、パーパスには、そのような体系を規定する考えはありません。

様々なパーパス・ドリブン企業を見ても、パーパスだけを掲げている企業、パーパスとミッション・ビジョン・バリューをセットにしている企業、など様々です。

自社の理念体系を見直そうとしたとき、その企業に合ったかたちで柔軟に導入することが優先されるべきであると考えています。パーパスに合わせてすべてを見直す場合もあれば、今ある体系に新たにパーパスを加える可能性もあるでしょう。あるいは、今ある理念が存在理由を示しているのであれば、「これが理念であり、パーパスでもある」ということでも良いのです。


パーパス
「パーパス」は「私たちはなぜ存在するのか」を端的に言い表した言葉、今日の判断、今日の行動の拠り所にするための「いま」にこだわる現在進行形の概念

ビジョン
「ビジョン」とは、企業が「なりたい姿」。ビジョンは内面型と外面型の2種が存在。内面型は組織のなりたい姿の宣言、外面型は絵描きたい世界や未来の宣言

ミッション
「ミッション」とは、「ビジョン」を実現するために「果たすべきこと」

バリューズ
「バリューズ」とは、企業が大切にしている「価値観や信条」


なぜパーパスが大切なのでしょうか?

パーパスは、そのブランドの信念を表すものです。もしそれが明確になっていなければ、ブランドは競合や数字にばかり翻弄されることになるでしょう。

この10年ほどで、日本を含む世界中の多くのグローバル企業がパーパスを制定し、パーパスを中心に据えて経営を行う方向に舵を切っています。それは、働き手、消費者、株主、経営者という、ビジネスにおける4つの重要なステークホルダーの要請でもあります。


20世紀後半のビジネス環境は、先行きはある程度の予測がつくという暗黙の前提のもと、変化を意図しない静的な中長期の戦略をトップダウン型で進めていくことが可能でした。しかし21世紀に入り、より変化のスピードが加速し、不確実かつ曖昧で、価値観が複雑化したビジネス環境においては、一方的なトップダウン型のマネジメントは通用せず、個々を尊重しながら共感を集めて組織を率いる必要性が出てきたのです。

21世紀型の組織は、明快なパーパスを中心に据え、それに基づいた聡明な理想やビジョンを積極的に発信し、それに共感した外部から資金やリソースを集めて価値創造環境をつくり出すのが特徴です。つまり、21世紀型組織においては、パーパスに共感した者同士が社内外で「共創」し、戦略を「創発」していくのです。

また2019年、日本の経団連にあたる、アメリカの大手経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、「企業のパーパス」について新たな方針を発表しました。これまで20年以上に渡り掲げてきた「株主至上主義」を見直し、顧客・従業員・サプライヤー・地域社会・株主などのすべてのステークホルダーを重視する、「人・社会を重視した方針」に転換することを表明しました。アマゾンやアップル、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど米国大手企業181社ものCEOが署名をし「時代に合わせ、長期的視点に立った方針に変更した」との見解を示しています。

これら一連の出来事により、働き手、消費者、株主、経営者といったビジネスにおける全てのステークホルダーがパーパスを大切にしていく姿勢は鮮明になりました。この10年で、日本の企業も含め、世界中の多くのグローバル企業がパーパスを制定し、パーパス主導の経営に舵を切っています。パーパスのムーブメントを背景に、ビジネスのやりかた・仕組みは変化し、今までの資本主義は存在せず、2020年代に入ったいま、すでに新しい次元の資本主義に生まれ変わっています。株主のみの利得から脱却し、長期的な視点を持ちながら、志の高いパーパスにインスパイアされ、社会と世界をどう良くするかにつながる経営をする組織こそが、真なる企業の姿であり、もはや、組織には「パーパス」がなければ、現代社会の生存競争に参加できない状況となっているのです。


パーパスの持つ力

チームの団結を高め、情熱的な人材が集まる
パーパスはやりがいを与え、働きたくなる環境を作ります。既存社員の モチベーションが高まり、また、より多くの優れた人材を引き寄せることが可能になります。

組織の意思決定が一体化
パーパスが明確になり、組織に浸透することで、資源の配分、人材の採用、長期戦略の策定、成功の定義など、重要な意思決定を、ブレずに行うことが可能になります。

イノベーション強化
パーパス中心の会社は、既存の考え方や業界の枠にとらわれず、常にパーパスの視点から経営を行うことができ、イノベーションが起こりやすい環境を作ることができます。

ロイヤルティーの高い顧客を引きつける
パーパスに共感する顧客は、ロイヤルティーが高く、またブランドの信頼性を高める、エバンジェリストにもなってくれます。

会社がパーパスドリブン企業へ変革することで、様々なベネフィットを得ることができます。そして、それが最終的にエクセレント・パフォーマンスにつながります。アメリカの名門大学やコンサルティング会社の多くでパーパスドリブン企業の調査と研究がなされており、パーパスドリブン企業のパフォーマンスが、競合と比較してより高いことが判明しています。ブランド理念を追求し正しいことをすれば、業績としても良い結果を残すことができる。この事実を理解し、実践したブランドこそ、長い目で見て最も大きな利益を手にすることが可能なのです。


「パーパス」は、「Why?」という問いから始まります。「Why?」への答えには、その企業の「本質」があります。「真の姿」があります。

経営には「合理的な判断」だけでは乗り越えられないような事態がたびたび起こります。そのときにも必要なのが、拠り所となるもの、それが「パーパス」です。

「私たちはなぜ存在するのか?」

自分たちの「存在理由」にまで立ち帰り、それに耳をかたむけ、決断をするのです。パーパスは、どんな困難にも立ち向かう力を与えてくれます。全員が同じ方向を向いて行動を起こしていく力となり、価値創造のスピードを上げてくれます。