IBMやスターバックスなど多くのグローバル企業のトランスフォーメーションを手掛けてきたアメリカのコンサルティング会社SYPartnersのエグゼクティブ・バイス・プレジデントMaulhardt氏に、パーパスについての独占インタビューを行いました。

 


 

SYPartners はどのような会社ですか?

ニューヨークとサンフランシスコを拠点にするコンサルティング会社です。企業のトップや経営陣と組んで、めまぐるしく変化を続ける社会において、常にトランスフォームできる企業づくりの手伝いをしています。リーダー達がその企業の未来を描くにあたって、パーパスドリブンな戦略を組み立てること、そしてその戦略を実行に移せるトランスフォーメーションができる文化を作り上げることが私たちの役割です。

 

SYPartners の「パーパス」の定義とは

私たちの「パーパス」を、「あなたの独自の存在理由はなにか?」もしくは「あなたは世界に何をするために存在するのか?」という問いに対する答えだと定義しています。これは組織であっても個人であっても同じです。

 

「パーパス」がトランスフォーメーションの中枢を担うのはなぜでしょう?

組織は、その望む成果を生み出すような戦略や実行を選択するにあたって、核となる真実(Core Truth)がなにかをしっかり認識しておく必要があります。その核となる真実を明言化したものこそがパーパスなのです。そのパーパスの意図することと関係のない変革は全く意味のない単なる活動になってしまうのです。

 

「パーパス」に加えて「ビジョン」はトランスフォーメーションの要素としてどのくらい重要でしょうか?

パーパスは北極星のようなものであり、決して揺らがないものです。ビジョンも同様に重要ですが、時間の経過とともに変化する可能性があります。明確な時間範囲とともに意思を表明したものがビジョンです。

トランスフォーメーションを起こすためには、その組織が本来あるべき存在で居続けるための試金石としてパーパスを必要とし、戦略的な期間において、数あるパーパス起点の活動をひとつの方向に導くためにビジョンを必要とします。

 

組織のパーパスを発見あるいは再発見する際に一番重要なことはなんですか?

当たり前に聞こえるかもしれませんが、一番重要なことは「私たちのパーパスは何なのか?」について実際に自問自答することです。それぞれの組織は、本来それを分かっているはずです。しかし、何千回も繰り返される意思決定は、本来のパーパスを薄めたり、パーパスから逸脱させたりするのです。時間をかけてパーパスを言葉で明確に示し、誰もが具体的なアイデアとしてそれと関われることが重要です。この作業はリーダー層だけでなく、皆がパーパスにコミットできるように組織全体で取り組まなければなりません。

 

多くの企業においてパーパスの重要性は理解していますが、組織内でどう活かしたら良いのかがわからない企業が多いようにも思います。組織内で浸透させ活かせるようにするにはどうしたらよいでしょうか?

よくあるのは、組織が一度パーパスを明確にすると、急にパーパスドリブンになったかのように勘違いをすることです。そこはあくまで重要な第一歩でしかありません。その段階で、それまでずっと行ってきた慣習、意思決定、パートナーシップ、成長戦略などに関しての見直しをすること、またそうやって見直した結果、パーパスがより活性化するのか?を改めて問う必要があります。もしその答えがNoならば、また考え直す必要があります。組織内のすべてのメンバーが、毎日の業務において組織のパーパスの実現に貢献しているということを実感できるようにすべきであり、そのような状態をつくることがリーダーの役割です。

 

最近の事例として、Weight WatchersWWのリブランディングをされましたが、SYPartnersは具体的にどのような支援をされたのでしょうか。また成功の秘訣はどこにあるのでしょう? 

WW社のリーダー層はパーパスを持ったビジネス展開を非常に重視していました。私たちはWW社のパーパス決定のメインパートナーとして、彼らのパーパスを現代のカルチャーを反映させた言葉で表現する手伝いをしました。また、その企業の将来につながる重要な意思決定をする際に、そのパーパスを使えるようにするための規定やツール作りをリーダー層と一緒に行いました。そのうちの一つとして彼らが意思決定に使う「パーパス・フィルター」と呼んでいるものを一緒に作りました。パーパスに沿って意思決定できるよう進めるための「YesかNoか」の質問集です。

 

日本の企業に参考となるケースはありますか?

ビジネスおよびカルチャー戦略のうえで、パーパスを活かすために大胆に行動できる企業から学ぶことができるでしょう。そのような企業はすべてのアクション、すべての決定がきちんとパーパスに沿ったものになっています。例えば、スターバックスはパーパスの原点(彼らの言う“Our Starbucks Mission”)に立ち戻り、最近問題となった人種的偏見問題での対応などを見直しています。この件でストアポリシーの書き換えが行われ、お店で買った人だけでなく、お店に入った人はすべてお客様であると明言し、対応マニュアルも変わることになりました。2018年5月には、北米内8,000店舗をクローズしてこの件に対する社内教育を行い、現在はポリシー、社員教育、実務の全面的な見直しをしています。

※:2018年4月、フィラデルフィアのスターバックス内で、注文をせずに友人を待っていたアフリカ系男性に対し、不法侵入だとして警察を呼んだが、その連行される姿がSNSで動画拡散され問題になった。

 

世界のビジネスおよび企業におけるパーパスについて2019年はどのようになると思いますか?

パーパスがビジネス界で話題になってすでに何年も経ちますが、情勢が不安定なときこそ、パーパスが果たす役割は益々重要になってくるのだと思います。不確かな状況の中での意思決定をするとき、企業はそのパーパスに立ち返ることで、そこに確固たる基盤を見つけることができ、ぶれることなく賢明な選択をすることができるのです。いま世の中が大きくシフトし、変化していることを皆が感じています。パーパスこそが2019年以降の激しい変化の中で、私たちの拠り所となることでしょう。

 

 

 

Lisa Maulhardt 

SYPartners社 エグゼクティブ・バイス・プレジデント

自社のスタッフとアイディアが世界に与える経験は、自らが志す偉大なブランドに相応しいものでなければならないという考えのもと日々の業務を行う。1994年にライターとして入社。2013年現職に就くまで、サンフランシスコ支社でのコンサルティング業務をリードする数年間を含み、同社でリーダーシップを担う。主なクライアントはApple, Disney, Gap, Herman Miller, Hewlett-Packard, IBM, Old Navy, PBS, Starbucks, Sundanceなど。スタンフォード大学にて学士号、UCデイビスにて修士号を取得。


SYPartners について

リーダー層、チーム、組織に対し、活力を与える変化を促し、その組織がパーパスとともに成長し、世界にポジティブな影響を与えられるように支援するコンサルティング会社。NYとサンフランシスコが拠点。25年に渡り、Starbucks, BlackRock, IBM, Apple, Nike, Obama Foundationなど、世界的に影響力のある組織をクライアントとする。クラス最高のクリエイティブ企業集団であるkyuの創立メンバー。https://www.sypartners.com


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