昨年もこのニュースレターでご紹介した通り、2月の最初の週末は、アメリカでの一大スポーツイベント「スーパーボウル」が開催されます。番組の視聴率の高さから、CMが超高額で取引され、放映される豪華なCMの数々は、著名なアーティストを招いて行われるハーフタイムショウと同じくらい注目されます。その時の流行やムードを反映する演出やCMも多く、毎年SMOでも欠かさずチェックをしています。

 

今年は2月7日に、フロリダ州タンパで開催されたスーパーボウル、もちろんこのコロナ禍の中で、昨年までと同じ様式で開催することはできません。スタジアムには、収容人数1/3以下の2.5万人しか観客を入れませんでしたが、空いた席は3万体の人型ダンボールパネルで埋め尽くされ、見た目にはまるで満席のよう。その「自分の写真がダンボール型になる権利」は$100で販売され、通常のチケット代には及ばずとも$3ミリオンの収益をあげています。VIP席には、セレブや著名人のダンボール型もちらほら。一方で、実際の観客の1/4に当たる約7500人分について、地元の医療従事者を無料で招待し、彼らへの感謝の意を表明しました。

 

今年は高額なCM枠も例年とは少し異なるさまで、毎年この番組でCMを出すことでおなじみのコカコーラ、ペプシ、バドワイザーといった顔ぶれは出稿を見送ることが発表されていました。日本勢としては、メルカリU.S.が初出稿することで話題となりました。

 

今年放映されたCMの中で、特に印象に残る2作をご紹介します。




Jeep “The Middle”

今までCMには出演を拒んできたブルース・スプリングスティーンが、”ReUnited States of America”、つまりアメリカの再ユナイトというCMのテーマに共感し、初めて出演に承諾したという、Jeepの”The Middle”。
COVID-19の影響もあり、さらに階層が分断化されてしまっているアメリカ社会の問題に言及し、アメリカの中間に位置するカンザスの田舎町で撮影されました(※本人はリモートによる合成出演)。
ところが、なんとこの放映の数日後に、ブルース・スプリングスティーンが飲酒運転の容疑で逮捕されたことが発覚。そのため現在は、Jeep公式ウェブサイト及びYoutubeや他SNSの公式アカウントからは、動画が削除されてしまっています。(公式でない動画が、Youtubeに上がっていますので、検索してご覧ください)


トヨタアメリカは、パラリンピックのスポンサーとしての立場から、アメリカのパラリンピック水泳選手Jessica Longの生い立ちにスポットライトを当てます。生まれつき両脚がなく孤児院にいた彼女は、養子エージェント経由で現在の両親に引き取られました。少し暗いプールを泳いでいくといつのまにか自分の過去に遡り、育ての親が自分を見つけてくれた時の様子が再現されます。伝えたいメッセージは、「誰もが持つ”hope”と”strength”」。車が一切登場しないながらも、スポンサーとして彼女を応援するトヨタの存在感が際立ちました。オフィシャル動画はこちら